「そもそも」を正しく使うのはテーブルクロス引きと同じくらい難しい

 

そもそも論の魔力

 

すぐ議論の中で「そもそも~」と言う人を見かけたことはないだろうか?

私の周りにそもそもいる。そもそもこの記事を書こうと思ったきっかけが、そもそもそういう人種を断罪せんがためであるから、そもそもこの記事は「そもそも」論の危険性を論じることになるだろうと思う。

 

さて・・・・・・突然ではあるが、

「そもそも」論はテーブルクロス引きくらい難しい。

しかも、テーブルクロス引きとちょうど同じだけ難しいのだ。

 

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テーブルクロス引きをする男のイラスト。このあと闘牛を行い周囲を混乱に陥れる

 

 

・なぜテーブルクロス引きと同じだけ難しいのか

「そもそも」という言葉のそもそもの意味は、辞書で引くと色々出てくるが、ビジネスの議論の場で使うときには、間違いなく「最初は」とか「元来は」とかいう意味だと思う。例文を見てみよう。

 

A.「少子高齢化によって、年金制度はこれから見直しを求められるかもしれないね」

B.「そうだね。例えば定年を引き上げるとか、政府も対策を始めようとしているよ」

A.「それでもまだまだ対策は不十分だと思う」

C.「そもすっ、そもそも、なんで少子高齢化は進んでいるんだろう?」

 

例文のCが「そもそも論者」だ。ろくな使いかたをしていないが許してほしい。意図は伝わるはずだ。

テーマは「少子高齢化」。それが年金制度の話になった。「そもそも」を使って、会話をもとのテーマに戻したのである。

そもそも論者は御覧の通り、会話の途中で突然出てくる。これまで黙って「そもそもチャンス」を探していたから、間違いなく噛む。

で、これをテーブルクロス引きに当てはめると、こうだ。

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テーブルクロス(=不純物)をうまく引き抜いて、机の上のもの(=本質)だけを残そうとする・・・・・・こんなのうまくいくだろうか?

ほとんどの場合・・・・本質まで粉々にしてしまう。

なぜならほとんどの場合、本質と不純物はそんなにきれいに分かれないのだ。テーマに完全に沿った議論など存在しない。ある程度の蛇行・試行錯誤を繰り返すのが自然な議論のはずである。「そもそも」という言葉で本質に立ち返った気になっている人、つまり何も考えず、理性の鎌で何でも切り取れば気が済むというのは、ただの自己満足にすぎないのだ!

 

↓「そもそも」によって粉々にされた議論

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では、「そもそも」テーブルクロス引きによって完全に粉々にされた会話をご覧いただこう。

 

A.「少子高齢化によって、年金制度はこれから見直しを求められるかもしれないね」

B.「そうだね。例えば定年を引き上げるとか、政府も対策を始めようとしているよ」

A.「それでもまだまだ対策は不十分だと思う」

C.「そもそも、なんでこんな議論をしているんだろう?」

C.「そもそも、なんでこんなところに集まったんだろう?」

C.「そもそも、なんで我々は生まれてきたんだろう?」

C.「そもそも、なんで悲しみと喜びは我々を苦しませ続けるんだろう?」

C.「そもそも、なんで悲しみと喜びは我々を苦しませ続けるんだろう?」

C.「そもそも、なんで悲しみと喜びは我々を苦しませ続けるんだろう?」

C.「そもそも、なんで人の縁はあんなに切れやすいんだろう?」

C.「そもそも、なんで戦争はなくならないのだろう?」

C.「そもそも、なんで人は子孫を残し続けるのだろう?」

C.「そもそも、なんで万物は存在するのだろう?」

C.「そもそも、ねえ、なんで?」